〜 Kと仲間たち 〜
2018年 12月
Kは一人であちこちと動き回るのが好き。
ぴょんぴょん飛ぶのが好き。
みんなとじっと絵を描いたり、本を読んだりするのはちょっと苦手なかわいい女の子。
給食、お弁当の時間は大好きでちゃんとみんなと座って楽しく食べます。ある日近くで食べていたお友だちが給食のコロッケをポトリと床に落としてしまったのです。
「アッ!」と叫んで、その子は自分がちゃんとひろわねばと、ティッシュの置いてある場所に向かいました。
すると…そばを通りかかったKが、サッとその落ちたコロッケをひろって、ポトンとその友だちのコロッケが入っていた場所へ戻してくれたのです。
見ていたもうひとりの子が、「アレ、K、コロッケひろってくれた」と気づき、落とした子にそれを伝えました。落としてしまった子は、「え〜! ありがとう! 」と言い、うれしそうにそのコロッケをパクンと食べたのでした。
(!? 本当はティッシュにくるんですてようと思っていたのでは?)
そしてその子と友だちは話しをしているのです。
A「ねえ、Kがコロッケひろってくれたねえ」
B「うん。ひろってくれたね」
A「ねえ、Kのママに話そうよ。Kがコロッケひろってくれたよ〜って」
B「そうだねえ。ママに言おうかねえ…」
様子を見ていた保育者たちは、その話をわざと少しはなれて聞いていました。そして嬉しく喜び合いました。
Kのママと保育者は、Kの成長のためにKが楽しく幼稚園で過ごせるように、いつも何度も話し合いを重ねていました。
ときには「もぉ〜!!」とお互いに言葉を荒げることも…。
うわべだけでなく、Kのことを思うとお互いにわかってもらいたい思いが強く、ぶつかりあうこともできる関係へと深まっていたのです。ママの気持ちもきちんと受け止めようと、みんなでよく話し合いをもちました。担任から聞く話は、みんなの学びとなることも多いのです。
そんななかで、私の好きな言い合い(!?)があります。
担任「…ママがそんな思いをしているなら、他の幼稚園に行ってみるのもいいかもよ」
ママ「そんなこと言ったって、この子を預かってくれる幼稚園なんて、あると思いますか!?」
担任「…」
その時の話題の中心がなんだったのかも忘れるほどに、なんだか受けちゃって…。みんなでひどく納得した。「そーだね。」
ママと担任がいつもよ〜く話をしているのを知っているのかもしれない、このクラスの子たちは、「そうだ! こんなにやさしいKのことをママに話そう。ママよろこぶかも…」と考えたのかもしれない。
もちろん、話を聞いたママは喜んだ。
お友達に「ありがとう」と言ってもらえるようなことをちゃんとするKをうれしく思ったし、友達がKを大切にしていることも、うれしく思ってくれたはずだ。
その日の職員の話し合いの時、
私 「ねぇ…あのときAは落としたコロッケをティッシュでつつんで捨てるつもりだったよねえ」
職員「うん。でもKがもとのところにひろって戻してくれたから」
私 「食べた…。それってさ、Kがひろってくれたからうれしくて、せっかくひろってくれたんだから、すてないで食べようか…って思ったのかな?」
職員「落としたのを食べた…」
私 「でも、汚れているというより、ひろってくれたから嬉しい気持ちが強かった?だから食べたのかな?」
職員「単純に元に戻ってるから…タベタ…?」
う〜ん、どうかなあ。
でも、どっちにしてもKはまさしく仲間なんだね!!
と、私たち保育者のKばなしはいつまでもうれしく続いたのでした。