〜 新説「三匹のやぎのがらがらどん」 〜
2019年 11月
私が昔…若い頃(!)、いろんな研修に行っていました。
今でもそれはちゃんと子どもたちへとつなげている大切な学びです。
なかでも、子どもたちの大好きな絵本「ねないこ だれだ」(せなけいこ)について、研修会で「この本みんな大好きですよね」と話が出ました。すると、その時の講師の先生が、「あれは!いかん! ねないこはあっちに行けぇ! とんでっちゃえ、はできない子はあっちへいけ、追い出すということにつながるのではないか…」と、おごそかに言いました。
なるほど…。そういう見かたもたしかにある。
これは…読み聞かせを考えよう。
喜ぶから、面白いからというのではなく、なにより「あっちへ行っちゃえ、とんで行っちゃえ」というのは…集団を大切にする一人一人を大切にすることに反する…のか。
と考えさせられました。
でも…。
でも、です。あれ、面白いんです。
笑いながら飛んでいっちゃう、おばけになって楽しそうに…。
そして我が園でもいまだに楽しく読み続けられています。
(胸にはいつも、はじきだすんではないからね、との強い思いを持ちつつ…読んでいます)
今議論になっているのは、あの「三匹のやぎのがらがらどん」。
発表会を前に、大人の私たちは子どもたちに劇をやってみせます。
今年は「がらがらどん」。
配役は若手にやってもらおうと、3匹が選ばれました。
子どもは大よろこびです…。
ところが、中くらいのやぎのがらがらどんが、なんともかんとも、チャラいったらないのです。
ヘラヘラ橋を渡って、こわいトロルに向かっても、ヘラヘラ、ヘラヘラ。
だれだろ!?
…あの大チャンです!
「な、なんだぁあの中くらいのがらがらどんは!?」
と私が思ったのは当然なこと。
子どもが帰ったあとの職員室で、改めてゲンコツをくらわそうと大チャンを待ちかまえて言ってやった!
どれくらいシュンと反省するかと思ったら、とんでもない!
ヤツは、歯むかってきたのです。
「ちょっと待ってくださいヨ。
この中くらいのやぎの顔みました? ちっともトロルをこわがってないすよ!
この目みました? 半分ばかにしてるじゃないすか?
トロルなんて、ただ威張っているだけのチョロいやつ! と思ってるっすよ」と。
大チャン説をとうとうとのべはじめるではありませんか。
この園では「三匹のやぎのがらがらどん」は聖書のようなもの。
最後に大きなやぎが橋をわたりに来てトロルに「だれだ!?」と聞かれると、
全員が「おれだ〜! 大きいやぎのがらがらどんだぁ〜!」と声をそろえる、あの一体感。
あのトロルをやっつける喜び!
それをチャラい大チャンが新説をぶちあげたものですから、天地がひっくり返る。
「いや大チャンそれはちがう。この園は中くらいのやぎはチャラくはないんだヨ」などさんざん説得しました。
が、大チャンはどうも納得がいかない様子で、
「イヤ、この中くらいのやぎの目つき、そんなにこわがってないすから…」とゆずらない。
きいているうちに、
だんだん、中くらいのやぎって、チャラいかも…
と思ってきてしまった私が悲しい。