〜 眠れない 〜
2020年 3月
明けましておめでとうと言い合って、あまり月日がたっていないはずの今、まさかこんなことになるなんて。
卒園に向けて、進級に向けて子ども達の輝くような笑顔がまぶしくて、楽しくて、活気に満ちていた幼稚園。
1回の練習もなく、卒園式にのぞんだ子ども達は、堂々として誇り高く巣立っていきました。名残り惜しさに涙をためていたのは私達大人。
3年間、4年間仲間のなかで育つ、ってこんなにもすごいことなんだね。
卒園式の練習だの、おわかれの言葉だのなんて、ちっとも必要なかったんだね、と職員どうし言い合ったことでした。
そして・・・ウィルスの感染はどんどん広がり、お世辞にも頭のいいとは言えない職員一同が知恵を絞って考えた学年別保育、時間差保育がようやく決定し、お家の方にお知らせする段になっての、休園要請。
決めては崩れる。 子ども達の笑顔がみえては消える。その繰り返しにすっかり気落ちしてしまいました。
宣言が出てからは、子ども達がなにしているのか、どうすごしているのか、私達は子どもとどうつながればいいのかと、みんなで悩みました。
まずは「生命を守らなければならない」
その上で、なにができるのか、職員はひとりひとりに手紙を書き、園だよりとともに送ったり、届けたり。そうやって子どものことをやっている時だけ、気持ちが落ち着くのでした。
ある日、私が幼稚園に向かって歩いていたとき、自転車が門の前に止まって中の様子を見ている人がいました。
「誰かな?」と近づいてみると、Aちゃんのお母さん。
「あ…。どうしてる?」と尋ねると、涙をポロポロこぼして「遊具とか新しくなってるんですね…。」と。
(用務の人に頼んでジャングルジムやらのペンキを塗り替えていたのです)
「そうなの…。」と答えるけれど、なにをどう話したって・・・。
「子ども達を待っててくれてるんですね」と、ずっと涙をポロポロこぼしながら、お互いに通じ合うものを胸に、顔を見合わせるのが精一杯でした。
待っているよ。
いつ来てもいいように、私たちはここにいて、あなた達を待っているよ。
緊急事態宣言が延長となり、また職員は子どもへのおたよりを書き始めました。
私は、毎晩眠れない。
これではいけない。このことでなにを学ぶかが問われているんだ。
生きること、死ぬことも含めて、しっかり学ばなければ…と、ソーシャルディスタンス風に席をはなしての職員会議の時に、熱く演説した私でしたが、眠れない…。
そして、老けた。
(かなり、マズイ。自分)