たみこさんの部屋

〜 母・・・の友 〜

2022年 1月

私の50年にわたる保育者生活の中で、本当に沢山の子どもとお家の方とに出会いました。

50年。

半世紀・・・。

子どもから学んだことはもちろんのこと、お家の方から学んだことも、なんと多いことでしょう。それを今の保育に生かせているだろうか、と私はいつもじぶんをかえりみる。(私の唯一といっていいくらいの長所だ)

数年前に入園してきた子は、Ⅰ型の糖尿病があり、いつも血糖を測定する器具を身につけていた。あちこち入園を断られ、たどりついた西小岩幼稚園。
血糖に異常が生じるとピーっと音がする、それをつけてころんだりも危ないし、なによりきちんとみていなければ、生命にかかわる。
職員みんなで何度か話し合いをして、子ども達にも病気のこと、大切な計測器のこと、音がしたらみんなでその子のためにどうするかなど話し合って、幼稚園生活がはじまった。

問題なのはお昼ごはんの時。食べる前に血糖値を見て判断しなければならない。
それはお母さんにお願いするしかない。

お母さんはよくがんばられました。

遅くなっての登園だと、お昼ごはんまでそこらの道で車をとめて待っていてくれたり…(お母さんは夜お仕事をしていたので、遅刻してくることも多かった)
また、確認しにきてくれる時間が遅くなり、みんなでお昼ごはんが食べられないというコトもあり、子ども達に「AちゃんのママがOK出しにきてくれたらお弁当にしようね」と言うだけで、心からうなずいてくれるクラスメイトたち。

時々は担任が「ママ、おそいよ〜!! みんなおなかすいちゃったよ〜!」と遠慮なく文句を言ってることも、当然ある。

私はというと、マジメな顔してその子の様子を話したり聞いたりすることはできるのだが・・・。
なんというか、今時の夜のお仕事の人と、どういう口調で話していいのかが見当もつかない。変なところで笑ってくれたりすると、こっちがひきつってしまう。

お母さんのほうは、くったくなく、お店にはり出す、きれいにお化粧して別人のように見える写真を見せて、担任としゃべって笑っていたりするのに・・・。
小心者の私は、なんだかオロオロしてしまう。

その年の親子遠足の時のコト。
お母さん達も子ども達も嬉しそうに走り回ってあそんでいる。
いつものように小さな子の(在園児の弟や妹たちの)お母さんが、誰のお母さんかわからないくらいみんな仲良しで嬉しい。
そのなかで、内のお母さん達って、ホントになんの気負いもなく、全く自然にアハアハ笑って話しかけている・・・。

そうか。

見かけや仕事や、なんにも関係ないんだ・・・。
とこの半世紀にわたって保育の仕事をしている私が、改めて、改めて思ったのです。

なんだって、こんなにびびってたんだろう。私。

頑張って仕事して、子供を育てているお母さんにかける言葉を考えていて、どうするんだ・・・と。
そしてなにより、同じ母親としてなんのてらいもなく自然に肩をたたき、話しかけて笑い合うその姿に、心から学ばされました。

その後私がそのお母さんと笑って話せるようになったのは、
言うまでもありません。

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