たみ子さんの部屋

西小岩幼稚園の園長、たみこさんが日々の徒然や、思い出や、愚痴をそっと語ります。

〜 通りすぎた子 〜

2021年 4月

 

卒園式を終えて、子どもたちは元気に巣立ちました。

中学生になった卒園児たちも、制服姿で「中学生になったよ」と会いに来てくれました。

まぶしくも大きくなった子ども達の姿を見て、職員達はたいそう喜びました。

ところで、新1年生は最初の頃、集団で学校から帰ってきます。

そのランドセル姿の列が園の前を通ると、職員がきゃあ〜と喜びの声をあげながら 門のところに寄り、「おかえり〜!」と手を振ります。
新1年生たちは半分緊張し、半分ホッとして手を振ってくれます。
で、「◯◯ちゃ〜ん! おかえり〜!」とついつい名前を呼ぶじゃないですか。

ある時園に電話がかかりました。

西小岩幼稚園の子ばかりが通るのではありません。名前を呼ばれておかえり〜と言ってもらえる子はいいですけれど、他の幼稚園の子たちは呼ばれないで、かわいそうです

そうか???
名前知らない子もいるしなあ〜。

そしてまた小さな(脳みその)あたまを寄せ集めて考えて、名前は呼ばないようにする。「みんな〜」と言おう、「みんな〜おかえり〜!」と言おうと決めて、そうやって手を振りました。
いやいや、そうかと考えさせられたコトでした。

実は、私の孫も向かいの小学校へ入学しました。

集団で帰ってくるから、門の前で迎えてあげてほしいと、仕事に行く母(つまり娘)に頼まれた私は、門の前で待ち受けていました。

来ましたきました。それらしい列が…。

そして卒園したばかりの元まつぐみたちも並んでランドセルを背負って歩いてきました。
なんてかわいい!!

おかえり〜!」と声をかけると、「アッ!たみこさん!ただいま〜」とこたえてくれたり、緊張気味の顔がふっとほころんでかわいいなぁ〜、と手を振り続けて。

アレ? ところで私が待ち受けている孫は!? 

その列は先生を先頭に通り過ぎました。
アレ?と途方にくれてウロウロ・・・しばらくすると、先生と孫が2人して戻ってきました。
あの列には、確かに存在していたらしいのです。

なんで? なんで通りすぎたの?
私はびっくりぎょうてん、問いたださずにはいられませんでした。

先生は「途中で抜けてはいけないと思ったんでしょうね。
とフォローしてくださいましたが、私はしばらくそのショックから立ち直れませんでした。

なんでだ!? 

愛する大ママちゃん(いわずとしれた私のコト)が門の前でしっかり立って迎えていたでしょうが!
他の子が「たみこさ〜ん」と呼んでいたでしょうが!
どーして?
どーしてそのまま通り過ぎてしまったの!?

 

考えました。 

そして気付きました。 

 

孫の通っていた保育園では、先生達のいうことは絶対で、トイレに行くのも行きたいか、行きたくないかではなく時間で行列をつくって行かされるのです。

怒られてはいけない。言うことをきかなくてはならない。そういう雰囲気に満ちていました。

迎えに行った時、よく子どもどうしがもめていました。
泣きながら言い合う姿を見ても、保育者がじっくり話を聞いている場面は見られません。あるときなんて、1人で泣いている子のすぐそばで、保育者が雑用をしていて、私の孫も知らんふりです。

ショックでした。
どーしたの? って聞いてあげなかったの?」と言っても、「へ?」って感じでした。

私は思いました。
レールを敷かれて、そこからはみ出すな、言われたことをするだけがいい子。
その思いの中で育てられた子は、本当に自分の頭で考えて、自分で判断することができなくなるんだ。

私の孫も、6年間の保育園生活の中では、大人に言われないと動いてはいけない、って思って過ごしていたんだなと。
私の姿を見て、ここで列を離れるんだ。先生に指示されなくても、ここだ! と判断することができないなんて・・・。

静かにそ〜っと私の前を通り過ぎてしまったその子を、私はしばらく「通りすぎた子」と呼んで、からかったのでした。