〜 おせじもおべんちゃらも発達のうち 〜
2017年 9月
以前、「おしいれのぼうけん」という絵本がとても大好きな年長さんがいました。何度もよんで、発表会には劇にしたりして…。
その年のお泊まり会では、その絵本に出てくるこわ〜いこわい「ねずみばあさん」にあいさつに行くというキモだめし的なことをやりました。
日頃いばりくさって絶対いうことなんかきくもんか! というワンパクどもを、おどかしてやりたい。びびる姿をみてクスクス笑ってやる…との意地悪センセ達のたくらみです。
用務のおじさんが、こりにこって衣裳やライトを準備しまくって、倉庫のうす暗いドアをあけると、ねずみばあさんが、ライトに照らされてコワ〜く浮かび上がるという設定。
これならあのワンパクどももふるえあがるにちがいない! シメシメ…。
さて、その時になって、1人ずつ「ねずみばあさん」にごあいさつに行く子どもたち。
泣いたり、いやがったりするなかで、絶対泣いて行かないハズと思っていた子がそうでもなかったり、面白いったらありません。
ある男の子(イタズラ好き、ワンパク坊主ナンバー1!!)が、はじめのうちは「オイラへっちゃらだい! ねずみばあさんなんてこわくもなんともねえ」とか言っていたのに、自分の番が近づくにつれてだんだんソワソワして…。
「さぁ〜!行ってこい! ねずみばあさんにちゃんとごあいさつするんだよ!」という私たちの励ましの声におくられて、おっかなびっくりドアを開けたとたん!
「ね、ねずみばあさん! こんばんわ!!
ぼ、ぼくは、ねずみばあさんのこと、だ、だいすきです! ホントにだいすきです! こ、これからも、ずっと、ねずみばあさんを、だ、だいじに、し、します!!」と叫んで、見れば手を合わせて涙を流さんばかりに拝みまくっているではありませんか。
あんなに笑ったことはありません。
今でも元気がなくなると、あのワンパクがヘイコラ手を合わせて拝みながら、ねずみばあさんにおべんちゃらを言う姿を思い出して、笑います。
友達の気持ちを傷つけてはいないか、友だちはどんな気持ちだったのかな、とクラスで話し合うこともよくあります。
強い子が、ちょっと弱いかなと思う子を、言うことをきかそうとすることも…。
すると、職員どうしで私が悪親分になって、やさしげな職員に「やってこい!!」とか命令することも。「イヤだ」と言えないこと、自分がやられてしまったらコワイので言うことをきいてしまう…。すると、やられたその子はどうなんだ?
その子も「イヤだ!やめろ!」と言えないといけない。
強い人(ホントはやさしい私)の言うことはきかないといけないのか(もしくは、いつも正しいはずの私の言うこと)
そんな話し合いが、よく繰り広げられます。
そこでの子どもの反応に、深く学ばされることもあります。
そして、そんなことは、繰り返されるのです。
子どもだって「わかっちゃいるけど…やめられない」こともあります。
みんなでサンザン話し合い、時には涙を流して
「友達の気持ちを大事にしよう…」
と深く深く胸に刻んだ話し合いの数日後、やっぱり!
またそんなことも、起こるのです。
職員室では「え!? このあいだの話し合いは?」
「また話し合う?」などなど…。
どうするかねえ、と考えて居たら、その主人公A(BもCもDもいるけどね)に、園庭で会いました。
私の心には、
「話し合ってわかってくれたと…思ったのにどうなのよ…」
という思いがよぎった。
そのとき
「オっ! たみこさん! たみこさん!」と
よびかけてくれるのです。
「ハーイ、なあに」
「よんでみたかっただけ」
顔を見ると、なんか、やっぱり複雑(?)な顔して、でも満面の笑顔。
(おせじ、おべんちゃらで、私のきげんをとるような…かわいい顔しちゃって…)
わかってるんだよね…私を見て、つい、きげんとるみたいに声をかけたのは、「自分、わかってはいるんスヨ!」の思いなんだよね。
くりかえしていこうよ。
何度でも、何度でも。
いつだって私たちはあなたたちの気持ちのそばにいて、明るい方をみていたいよ。
大きくなってるよ。確実に。
と、おべんちゃらでよびかけられた私こと「ねずみばあさん」は、ふかくうなずくのでした。